如是世人。不信作善得善。不信為道得道。不信死後世復生。不信施与得其福徳。都不信之。爾以謂不然。終無有是但坐。是故且自見之。更相代聞。前後相続。転相承受。父余教令。先人祖父。素不作善。本不為道。身愚神闇。心塞意閉。不見大道。殊無有能。見人死生。有所趣向。亦莫能知者。適無有見善悪之道。復無語者。為用作善悪福徳。殃咎禍罰。各自競作為之用。殊無有怪也。至於死生之道。転相続立。或子哭父。或父哭子。或弟哭兄。或兄哭弟。或婦哭夫。或夫哭婦。顛倒上下無常根本。皆当過去。不可常得。教語開導。信道者少。皆当死生。無有休止。如是曹人。朦冥抵突。不信経語。各欲快意。心不計慮。愚痴於愛欲。不解於道徳。迷惑於瞋怒。貪狼於財色。坐之不得道。当更勤苦。極在悪処生。終不得止休。息痛之甚可傷。或時家室中外。父子兄弟夫婦。至於死生之義。更相哭泣転相思慕。憂念憤結恩愛繞続。心意著痛対相顧恋。昼夜縛礙無有解時。教視道徳心不開明。思想恩好情欲不離。閉塞矇瞑交錯覆蔽。不能思計。心自端正決断世事。専精行道便旋至竟。寿終命尽不能得道。無可那何。
(無知・無信による苦しみ)
このように世間の人は、善業を行えば善果を得ることを信じない。(仏)道を行えば道(さとり)を得ることを信じない。死んで後の世で転生することを信じない。布施をすれば、その功徳を得ることを信じない。まったくこれらを信じず、またそんなわけはないと思い、そういうことはないと言う。しかし、(他ならぬ)この(言動)のせいで、遠からずこれらのことを自分で体験することになろう。先祖から子孫へ相続される教えを代々聞き受け継いでいく。先祖はもともと善業・(仏)道を行ったことがなく、身も精神も暗愚で、心は閉塞していて、大いなる(仏)道を見ようとしない。人が死んで後おもむく境涯があるのを見る能力がまったくないし、知る能力のある者もない。そこには善い境涯と悪い境涯があるのを見ることもまったくないし、語ってくれる人もいない。善悪の行為を行うことによって、福徳・災い・懲罰がそれぞれ競うように起こるのも、そういうわけで(?)、まったく不思議なことではない。
死に至るという道理は次々と立ち現れてくる。あるいは子が父を亡くして泣き、あるいは父が子を亡くして泣く。あるいは弟が兄を亡くして泣き、あるいは兄が弟を亡くして泣く。あるいは妻が夫を亡くして泣き、あるいは夫が妻を亡くして泣く。(老幼・兄弟・夫婦の死の)順序が逆になるのは、無常の根本の姿だ。誰もみな過ぎ去っていき、永遠に留まることはできない。
教え語り、諭しても、この道理を信じるものは少ない。みな生死を繰り返し、とどまることはない。(しかし)このような人々は、ぼんやりしていてあちこちで衝突し、教えの言葉を信じず、それぞれ心を楽しませることを求め、思慮がない。(彼らは)愛欲に理性を失い、道徳をわきまえず、怒りのために惑い、財産や女色を貪っている。このために(仏)道を得ず、当然苦しみの極みを受け、悪い境涯に(再び)生まれ、決してとどまることはできない。その苦痛はいたましいかぎりだ。
(愚昧な追慕)
家族・父方や母方の親戚・父子・兄弟・夫婦の死(ぬという道理)に直面すると、互いに声を出して泣き、涙を流し、互いに追慕する。憂いが心のうちに鬱積し、恩愛がまとわりついて離れない。心は痛みに襲われ、互いに恋々として思いきれず、(その悲しみは)昼となく夜となく結ばれ束縛し、(それから)解放される時がない。仏道の恩恵を教え示しても、心を開いて受け容れず、(亡き人との)愛情を想い、情欲が身を離れず、心をすっかり閉ざしてもうろうとしており、(蒙昧さに)幾重にも覆われていて、(彼らは)思考したり、心をきちんとただしたり、世俗のことからすっぱり身をひき、ひたすら道を修めたりすることができない。最後までふらふらしていて、寿命が尽きても、仏道を得られず、もうどうしようもない。
如是世人。不信作善得善。不信為道得道。不信死後世復生不信施与得其福徳。都不信之。亦以謂之不然。言無有是。但坐是故且自見之。更相看視。前後転相承受。父余教令。先人祖父。素不作善。本不為道。身愚神闇。心塞意閉。不見天道。殊無有能。見人生死。有所趣向。亦莫能知者。適無有見善悪之道。復無有語者。為用作善悪福徳。殃咎禍罰。各自競作為之用。殊無有怪也。至於生死之道転相続。顛倒上下。無常根本。皆当過去不可常得。教語開導。信道者少。皆当生死無有休止。如是曹人。朦冥抵突。不信経語。各欲快意。心不計慮。愚痴於愛欲。不解於道徳。迷惑於瞋怒。貪猥於財色。坐之不得道。当更勤苦極。在於悪処生。終不得止休。息痛之甚可傷。或時家室中外。父子兄弟夫婦。至於生死之義。更相哭涙転相思慕。憂念憤結恩愛繞続。心意痛著対相顧思。昼夜無有解時。教示道徳心不開明。恩愛情欲不離。閉塞蒙蒙交錯覆蔽。不得思計。心自端正決断世事。専精行道便旋至竟。年寿命尽不能得道。無可奈何。
如是世人。不信作善得善為道得道。不信人死更生恵施得福。善悪之事都不信之。謂之不然終無有是。但坐此故且自見之。更相瞻視先後同然。転相承受父余教令。先人祖父素不為善不識道徳。身愚神闇心塞意閉。死生之趣善悪之道。自不能見無有語者。吉凶禍福競各作之。無一怪也。生死常道転相嗣立。或父哭子或子哭父。兄弟夫婦更相哭泣。顛倒上下無常根本。皆当過去不可常保。教語開導信之者少。是以生死流転無有休止。如此之人。曚冥抵突不信経法。心無遠慮各欲快意。痴惑於愛欲。不達於道徳。迷没於瞋怒。貪狼於財色。坐之不得道。当更悪趣苦。生死無窮已。哀哉甚可傷。或時室家父子兄弟夫婦。一死一生更相哀愍。恩愛思慕憂念結縛。心意痛著迭相顧恋。窮日卒歳無有解已。教語道徳心不開明。思想恩好不離情欲。惛曚閉塞愚惑所覆。不能深思熟計心自端政専精行道決断世事。便旋至竟年寿終尽不能得道。無可奈何。